「わかった、時代の欲望を広告にしたからだ」惜しい、もう少し。「時代の欲望を通信販売という広告にしたからだ」それが正解だ。『ルームランナー』は通信販売という広告で販売したからヒットしたのだ。松下や東芝の追随品は昔ながらの街の売り場で販売したからヒットしなかったのだ。それでは、なんで通信販売にしたらヒットしたんたち六〇年代まで、通信販売という広告はわが国の消費者たちにまるで信用されていなかったではないか。さすがにジャーナリストはするどい嗅覚をもっていて、評論家とは違って『ルームランナー』のブームを健康のブームよりも通信販売のブームとして捉えていた。NHKテレビをはじめ、いろいろな新聞、雑誌が取材にきた(田原総一朗さんや内藤国夫さんなどインタビュアーも一流だった)が、みんな共通して、『ルームランナー』のアイディアよりも「通信販売のわが国における可能性」を質問してきた。「通信販売で買う人はどんな層なの?」「見も知らぬ他人に先に商品を渡してしまってポンドに代金を払ってくれるの?」といった質問が多かった。ここのところを書くために七〇年代前半期の通販広告を朝日新聞縮刷版でたしかめてみたら、新聞の世界では『レコード』と『8ミリカメラ』くらいしか見当らなかった。あと目につく通販広告といったら、タキイ種苗、大和農園などの種苗カタログ請求広告、ヒサヤ大黒堂や養命酒の資料請求広告くらいしかない。
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