美容する快楽、化粧できる幸福

2011.03.31

先の漢詩で最も私が気になるのは、往時の女が日がな美貌を磨くという叶姉妹やヒルトン姉妹のような日々を送っていた点だ。衣食住すべて満ち足りた女が、最後に走るのは美容である。エステで体を磨き、美容サロンに日参する今のリッチな女たちと「零落小町」の豊かな往時には似通うところが多い。美容は程度の差こそあれ、いつの世にも富の象徴で、最高の贅沢なのだ。二〇〇○年以降、漫画家安野モヨコの『美人画報』、美容ジャーナリスト斎藤薫の『「美人」へのレッスン』、元モデル朝倉匠子の『35歳からの美人道』、料理研究家小林カツ代の『美人粥』、ミス日本手塚圭子の『美人のつくりかた』、医師海原純子の『「きれい」への医学』などなど、各分野から美を銘打った本が出され、売れ行きを伸ばし、現在、この手の本はさらに多彩になってきている。これは一部の金持ちだけでなく、今の日本女性全体が衣食住に足りている証しではないか。とすると私たちにも、下手すれば、平安末期の特権階級のように、零落の運命が待ち受けているのでは……?戦乱の世になって、美容も見た目も二の次の武士にとって代わられた貴族のように……。百円化粧品もあるご時世、よほどでなければ化粧できない境遇にはなるまいが、化粧する暇があったら、国に尽くせ、子供を産めなどと「化粧する独身女」が弾圧される動乱の世が今後、来ないとも限らない。化粧できることの幸せをもっとかみしめつつ、そんな時代の到来はなんとかして防ぎたいものである。
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